解体業者の倒産が過去最多ペース:「安すぎる見積もり」のリスクと施主が選ぶべき道

宮城県の解体工事会社が自己破産申請へ、また、横浜市で解体業を営む企業が大手ゼネコンへの依存を原因に自己破産するなど、解体工事業者の経営破綻に関するニュースが相次いでいます。報道によれば、解体工事業者の倒産件数は過去20年間で最多を更新するペースなんだとか。東京商工リサーチもこのように報じています⇒「解体工事業の倒産が最多ペース」
確か去年も同じ話題をコラムで取り上げた記憶があるので、業界人としては「毎年過去最多を更新しているのか」と暗い気持ちになりますね。
世の中の流れは空き家が増加傾向にあるのに、解体業界では倒産が増えるという、一見矛盾したこの現象の背景には、業界の構造的な課題と、高騰し続けるコストの波があります。
なぜ解体業者の経営が厳しい?
解体工事業者の倒産が増加している主な要因は、需要の増加に供給能力が追い付かず、原価が急激に高騰している点にあります。主な経営圧迫要因は以下の三つです。
- 人件費の高騰と「2024年問題」
- 建設業界は慢性的な人手不足が深刻で、職人の高齢化も進んでいます。需要に対して労働力が不足しているため、人件費が上昇しています。
- 特に2024年4月以降、建設業にも時間外労働の上限規制(いわゆる「2024年問題」)が適用され、従来の長時間労働に頼った工期短縮が困難になりました。これにより、労務コストが増加し、賃金引き上げに対応できない体力のない企業から若手が流出するという悪循環が発生しています。
建設業の2024年問題
2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されたことに起因する諸々の問題を指します。これにより、労働環境の改善は進むものの、工期の延長や人件費の高騰は避けられません。企業の経営に大きな影響を与えています。
- 産業廃棄物処理費の急激な上昇
- 解体工事費の中で大きな割合を占めるのが、廃材の処分費用。当社の解体工事でも解体費用の半分が産業廃棄物処理費用というケースも珍しくありません。
この要因には環境規制の厳格化や最終処分場の減少、分別義務の徹底(建設リサイクル法)により、産業廃棄物(産廃)の処分費が大幅に高騰していることが挙げられます。 - 産業廃棄物の処分費はもう何年も継続的に上昇しており、今後も解決の目処は立っていません。このコスト上昇を工事費に適切に転嫁できなければ、業者は赤字工事を強いられます。お客様の立場では「解体費用は高い」となりますが、解体業者も薄利、時には赤字覚悟で請け負ったりしているのです。
- 解体工事費の中で大きな割合を占めるのが、廃材の処分費用。当社の解体工事でも解体費用の半分が産業廃棄物処理費用というケースも珍しくありません。
日本銀行による統計
企業向けサービス価格指数(CSPI)では、廃棄物処理単価が長期上昇しています。2018年以降に騰勢を強め、2025年も前年比3〜6%のプラスで推移。人件費や施設の修繕費増が直接的な押し上げ要因となり、高騰が続く構造が鮮明です。つまり、今後も解体費用は上がる可能性が高いということになります。
建設リサイクル法
2002年に施行された法律で、解体工事で発生するコンクリート、木材、アスファルト・コンクリートの3品目を現場で分別し、再資源化することが義務付けられています。この分別解体への移行は、手間と時間がかかるため、解体費用上昇の大きな要因となりました。
- 燃料・資材コストの高騰と受注競争
- 重機を使用する解体工事では、燃料費や重機メンテナンス費の上昇も無視できません。
- さらに、解体業者が増加したことによる価格競争の激化も問題です。コスト高騰に伴い工事単価が上昇すると、施主の顧客離れを招き、結果的に「受注不振」が増加するという皮肉な状況も生まれています。今回のニュースにあったような、"大手ゼネコン依存型"の企業の場合、取引先の方針転換や取引縮小がそのまま経営破綻に直結するケースも見られます。
施主様への影響:安易な価格競争の危険性
解体費用は2000年対比で約1.5倍まで上昇しており、今後も高騰が予測されています。こうした中で、施主様が「少しでも安く済ませたい」と考えるのは当然ですが、相場を大幅に下回る安価な見積もりに飛びつくのは大変危険です。
経営が安定しない業者や、コスト削減を無理に進める業者は、以下のようなリスクを施主様に負わせる可能性があります。
- 不法投棄のリスク
産業廃棄物処理費をケチるために、廃材を不法投棄する悪徳業者が存在します。不法投棄が発覚した場合、工事の依頼主である施主様も場合によっては法的な責任や追加の撤去費用を負担する可能性があります。 - 手抜き工事の発生
適切な分別を行わない手法や、アスベスト調査・処理の省略など、コンプライアンスを無視した手抜き工事につながる可能性があります。解体工事は細かなところまで法律で定められているため「手抜き=違法」ということも十分あり得ます。
解体工事は、単に建物を壊すだけでなく、地域環境と安全に直結する専門性の高い事業です。
価格だけでなく、「経営の安定性」「安全管理体制」「産業廃棄物の適正処理能力」を確認し、信頼できる業者を選ぶことが、結果的に施主様自身の安心とコスト削減につながります。
ちなみに、日本クレストは解体のみの会社ではなく、公共の土木工事なども請け負っています。公共工事を請け負うには国が求める人的要件や経営要件をクリアしなければならず、それは一筋縄ではいきませんが、解体工事を検討される施主様にとっては一つの安心材料にもなっています。

業界再編とM&A
解体業界では、人手不足とコスト増が倒産の引き金となる一方で、生き残りをかけた業界再編の動きも進んでいます。
大手ゼネコンやハウスメーカーが解体業者を傘下に収める「垂直統合」の動きや、後継者不在の優良企業が事業承継(M&A)によって事業規模の拡大を図るケースも増加しています。
これは、安定した経営基盤を持つ企業が、技術や人材、許認可といったリソースの確保を目的としているためです。施主様が業者を選ぶ際には、こうした経営の安定性や将来性も判断基準の一つとして考慮すべきでしょう。
まとめ
解体業界では、倒産件数が過去最多ペースで推移しており、経営環境は厳しさを増しています。
その背景には、人手不足と「2024年問題」による労務コストの上昇、産業廃棄物処理費や燃料費の高騰といった構造的なコスト増があります。
一方で、価格競争の激化により、これらの上昇分を十分に工事費へ転嫁できない企業も多く、収益を圧迫しているのが実情です。
おそらく、この傾向は今後も続くことでしょう。解体費用が下がる理由が見当たらないからです。空き家を持たれている方で今後の利活用の予定が全くない方は、このあたりの事情も考慮しておくべきではないでしょうか。

