空き家バンク「高成約率自治体」に学ぶ!移住希望者に選ばれる物件の条件と対策

『移住先の住まいを探しやすいまちは? 空き家バンク登録数・成約数が多い自治体ランキング【2026年版 住みたい田舎ベストランキング】』(🔗詳細はこちら)というニュースがありました。

このニュースは、「住みたい田舎ベストランキング」の調査結果に基づき、特に空き家バンクへの登録物件数が多く、かつ成約率が高い自治体が注目されているというものです。ちなみに成約数の多い自治体とは以下の通りです。

田舎暮らしの本Webより引用

国土交通省の調査では、全国の自治体の7割以上が空き家バンクを設置しているとされ、空き家バンクが田舎暮らしにおける住まい探しの主要なルートになっていることがわかります。

空き家所有者、特に地方の空き家を売却したいと考える方にとって、この情報は「どこに登録するか」ではなく、「どうすれば移住希望者に選ばれ、成約に至るか」という具体的な戦略を立てる上でヒントとなります。高成約率の自治体の成功要因を分析することで、所有者としての物件戦略が見えてきます。

1. 空き家バンクの現状と高成約率の秘密

空き家バンクは、需要と供給をマッチングさせる公的なシステムですが、登録物件の「玉石混交」状態が課題となることもあります。しかし、ランキング上位で高い成約率を誇る自治体は、単に物件が多いだけでなく、以下の点で共通した取り組みを行っています。

  1. 物件の質の担保と情報開示
    単に古い物件を登録するだけでなく、写真や間取り図を充実させ、築年数、修繕履歴、特に重要な水回りや主要構造部の状態を正確に開示しています。これにより、移住希望者は物件の状態を事前に把握しやすくなり、内覧後のミスマッチが減ります。
  2. 強力な経済的支援
    移住者向けの改修費補助金や家財道具の処分費補助金、さらには子育て世帯向けの家賃補助など、手厚い経済的インセンティブを提供しています。物件購入後の費用負担が軽減されることで、老朽化物件であっても購入に踏み切りやすくなります。
  3. 専門家によるワンストップ支援:
    福知山市の事例(別記事参照)のように、自治体が不動産専門家(宅建協会)、建築士、司法書士などと連携し、相談から契約、リフォームまでを一貫してサポートする体制を構築しています。これにより、移住希望者は手続きの不安を感じることなく、安心して契約を進められます。

ちなみに、日本クレストが事業展開する岡山でも、様々な取り組みが行われています。

岡山市
複数の不動産業者が一同に会する「下見会」を実施。所有者がその場で信頼できる業者を選定でき、スムーズな媒介契約へつなげる仕組みで成約率79%を誇る。

瀬戸内市・真庭市
単なる不動産のマッチングにとどまらず、移住相談員や空き家コンシェルジュとも呼べる専門員が「住まい・仕事・コミュニティ」をセットで提案。

笠岡市
360度カメラで撮影したパノラマ画像を公開し、遠隔地からでも細部まで確認できる環境を整えている。

2. 所有者が行うべき「選ばれる物件」への戦略的投資

空き家バンクで早期に成約を勝ち取るためには、所有者側も戦略的な準備が必要です。「現状のまま」登録するのではなく、移住者の視点に立って物件の価値を高める努力をしましょう。

  • 戦略 1: 査定と価格設定の適正化
    地域の不動産業者(特に空き家バンク連携業者)に依頼し、物件の市場価値と、移住者がリフォームに費やすべき費用を総合的に考慮した「妥当な価格」を設定します。価格が高すぎると、移住希望者は補助金を考慮しても二の足を踏みます。
  • 戦略 2: 「致命的な欠陥」の事前修繕
    大規模なリフォームは不要ですが、雨漏り、シロアリ被害、水回りの故障など、移住者がすぐに住めないレベルの致命的な欠陥がある場合は、売主負担で事前に修繕することが、成約率を大幅に高めます。
  • 戦略 3: 残置物(家財)の完全撤去
    空き家バンクを利用する移住希望者は、「すぐに住み始めたい」「自分の好きなようにリフォームしたい」と考える人が大半です。残された家財(残置物)の処分は大きな負担となるため、事前に所有者が責任をもって撤去し、清掃を済ませておくことが、物件の魅力を高める上で不可欠です。

空き家所有者にしてみたら、「できるだけお金をかけずに手放したい」と思うところですが、そのような考えで買い手がつかない状況が何か月、何年も続くと余計に売れにくくなってしまいます。空き家は放置しているだけでどんどん負のリスクが蓄積していきますから売る、貸すとなったら一日でも買い手が現れるように対策をすべきだと言えるでしょう。

ちなみに、岡山市の場合は空き家バンク登録物件であればリフォームや残置物撤去に対する補助金制度が用意されています。

3. 空き家バンクを利用するメリットと「特定空家等」リスクの回避

空き家バンクは、地方の空き家にとって、地元の限られた市場の外、すなわち「全国の移住希望者」に向けて物件を発信できるという最大のメリットがあります。

また、空き家バンクに登録し、積極的な売却努力を行っているという事実は、自治体に対して「所有者として適切な管理・活用努力をしている」というアピールにもなります。これにより、「特定空家等」に指定されるリスクが軽減されるわけではありませんが、行政指導が入る前の猶予を引き出す程度の心理的効果はあるかもしれません。

指定作業は実務的

実際の特定空き家の認定作業は割と事務的に行われます。岡山市の場合だと、空き家の状態に対して担当者が点数をつけていき、その点数の合計点数が100点を超えると諮問会議を経て特定空き家に指定されることになります。

4. 専門用語の解説と空き家対策の展望

【専門用語解説】

  • 空き家バンク
    自治体が主体となり、空き家の売却・賃貸を希望する所有者と、利用を希望する需要者(移住希望者など)をマッチングさせるための公的な情報提供システムです。
  • 成約率(せいやくりつ)
    空き家バンクに登録された物件のうち、実際に売買契約や賃貸契約が成立した割合を示す指標です。この数値が高い自治体は、支援体制や物件の質、価格設定が適切であると考えられます。岡山市の場合、成約率は7割~8割程度とのことです。
  • 特定空家等(とくていあきやとう)
    空き家対策特別措置法に基づき、倒壊の危険性、衛生上の問題、景観の阻害などにより、そのまま放置することが不適切と判断された空き家を指します。特定空家等に指定されると固定資産税が上がるなどのデメリットがありますが、除却(解体)の補助金対象になるというメリットもあります。

高い成約率を誇る自治体は、所有者の不安を解消し、移住者の夢を実現するための「架け橋」として機能しています。空き家所有者の皆様も、自治体の支援策を最大限に利用し、物件の魅力を高めることで、ご自身の空き家が誰かの「住みたい田舎」を実現する鍵となることを期待しましょう。